作成日:2026/07/16
介護あれこれ 冬の日A 2026.07.16
救急車に乗り込む前の私は、複雑な思いの中にいた。
――また母が大騒ぎして、私を呼び出そうとしているだけなのではないか。
――いや、本当に父の様子がおかしいのかもしれない。
そんな疑念と不安が、交錯していた。
最寄り駅へ向かう電車の中で、救急車から母携帯電話番号から着信が入った。
応答すると、受話器の向こうからは救急隊員の落ち着いた声が聞こえた。
「今どちらにいらっしゃいますか。駅前でお待ちしています。」
その冷静な言葉に、ようやく現実であることに気がついた。
その後ふと、別の心配が頭をよぎった。
――母はお金を持っているのだろうか。
救急車に乗った後のことなど考えられず、
ただ父を連れて病院へ向かうことだけを思っているのではないか。
プラットフォームから救急車の音を聞いていたが、私は駅のATMで急いでお金をおろした。
父はこれまで、いつも元気だった。
病気で寝込んだ姿を見たのは、歯周病で歯が腫れたあの一度。
だからこそ、私は父を「病気とは無縁の人」だと、どこかで信じ込んでいたのだ。
これから どうなるのだろう。その思いが浮かんできた。







