作成日:2026/07/10
介護あれこれ 冬の日@ 2026.07.10
冬の夜は、いつもより静かだった。
その静けさを破るように、母からの電話が鳴った。受話器越しの声は「お父さんの様子がおかしいの」と動転していた。
翌日は祝日だった。母が近所の方に助けを求めると、すぐに駆けつけてくれ、救急車を呼んでくれた。 救急車は駅に到着した私を待っていてくれた。
その救急車に乗り込み、父の横に座った。
父が急病で倒れた姿を見るのは初めてだった。 母も私も、落ち着くどころかどうしていいのかがわからない状態のまま救急車が走っている。
父は明らかに動けないのだ。 それなのに、かすれた声で「大丈夫だよ」「大丈夫だよ」と繰り返した。
その言葉を聞いた瞬間、胸の奥がきゅっと締めつけられた。 ――ああ、この人は、苦しい時でさえ「苦しい」と言えず、ずっと我慢して生きてきたのではないか。
そう思った途端、視界がにじんだ。 救急車の揺れの中で、私はそっと涙をぬぐった。 父の人生の重さが、初めて真正面から胸に落ちてきた気がした。







