先日、育児介護休業規程の整備に向けて保育園を訪問した際、
たたき上げの園長先生がふと語られた言葉が、今も心に残っています。
「私は自分の子どもを育てるとき、親や兄弟、友人に助けてもらいながら何とか働き続けてきました。でも、一緒に働いていた職員さんたちは続けられず、退職していった。
今の育児・介護休業法が当時あれば、きっと辞めずに働き続けられたと思うんです。
子どもを産み育てながら働ける職場が当たり前になっていたら、少子化もここまで進まなかったかもしれないし、保育園の経営の先行きを心配する必要もなかったのかもしれない。」
この言葉には、現場で長年人を見てきた方だからこその重みがあります。
■ 女性労働の歴史をたどると見えてくるもの
労働基準法の歴史を振り返ると、かつて女性は「保護すべき弱者」と位置づけられ、
時間外労働の制限、休日労働の禁止、深夜業の禁止といった規制がありました。
しかし、昭和54年の国連総会で採択された「女子差別撤廃条約」をきっかけに、
“母性保護は差別ではない”という考え方が整理され、
昭和60年には男女雇用機会均等法の制定と労基法改正により、
女性を守る規定は「母性保護」として再構築されました。
その後は、育児・介護休業法が整備され、
本人が請求すれば時間外労働や深夜業を免除できる仕組みが整い、
「弱者保護」から「母性保護」、そして「仕事と家庭の両立」へと大きく舵が切られてきました。
■ 性別ではくくれない時代に、それでも変わらない“産む性”
今では、女性でも男性以上に働く方がいますし、
男性でも家庭を優先しながら働く方がいます。
性別だけで働き方を語ることは、もはや現実に合いません。
それでも、「産む性」は変わりません。
妊娠・出産・育児、そして介護──
これらは働く人の人生に確実に訪れるテーマです。
私自身も、子育て中に保育園に子供を預け、仕事をしながら資格を取り、
今は介護にも向き合っています。
少子化が進む社会では、働く人一人ひとりに
家族のさまざまな役割が重くのしかかってきます。
■ これからの職場に求められる視点
園長先生の言葉を聞きながら、私は改めて思いました。
「制度があるかどうか」ではなく、
「制度を使って働き続けられる職場かどうか」が問われている。
保育園や社会福祉施設は、まさに“人生の節目”に寄り添う職員が働く場所です。
だからこそ、働く人自身の人生にも寄り添える職場であってほしい。
制度の整備は、その第一歩です。
そして、制度を“使える空気”をつくるのは、現場の文化です。
■ どんな未来がやってくるのか
少子化、介護、働き方の多様化──
これからの社会は、これまで以上に複雑になります。
けれど、園長先生の言葉にあったように、
「辞めずに働き続けられる職場」をつくることは、
未来の子どもたちを守ることにもつながります。
制度の歴史を知ることは、
これからの働き方を考えるヒントになります。
私たちは今、
“働く人の人生”と“組織の未来”を同時に支える仕組みづくりの
大きな転換点に立っているのかもしれません。







